本展のみどころ

1.国宝・重要文化財を含む全国の天神信仰ゆかりの品々を一挙公開!

道真の遺品と伝わる国宝《菅公遺品》(大阪・道明寺天満宮)のほか、さまざまな姿の天神像、天神の功徳を示す文芸や芸能、武芸関係の品々など約140件の作品を紹介します。

2.史上初! 国宝《北野天神縁起絵巻》の全巻全場面を公開します!

9巻、合計80メートルを超える全巻全場面を、会期中巻き替えながら展示します。

国宝・北野天神縁起絵巻(承久本)とは

国宝 北野天神縁起絵巻(承久本) 巻第6(部分)
京都・北野天満宮[通期展示、巻替あり]

平安時代前期を代表する政治家・学者の1人である菅原道真の生涯と、彼が死後、神としてまつられる様子をつづった絵巻です。「北野天神縁起絵巻」は古来、数多く作られましたが、本文に承久元年(1219)の年号をもつ通称「承久本」は、最古かつ最優品です。大きさはおよそ縦52センチメートル。現存する日本の絵巻として最大の画面高を誇り、ダイナミックで躍動感あふれる人物や風景の表現とあわせて、鎌倉時代を代表する絵巻の1つとして長らく称えられてきました。また、承久本は一部が下絵のまま残されており、壮大ながら未完であるという、謎めいた制作事情も魅力の一部となっています。

国宝 北野天神縁起絵巻(承久本) 左から巻第6、巻第5
*いずれも部分 京都・北野天満宮[通期展示、巻替あり]

展示構成

天神信仰

人間・菅原道真の足跡を追いつつ、神号を得て神となった道真や、神仏習合により長谷寺や天台宗と強い結びつきをもつようになった天神とその本地仏である十一面観音への信仰を紹介します。

神となった道真、
現存最古級の天神像

束帯天神像(根本御影)

京都・北野天満宮 [5月5日~6月14日展示]

道真が愛用したと伝わる品々

国宝 伝菅公遺品

大阪・道明寺天満宮 [通期展示、写真の〈玳瑁装牙櫛・銀装革帯〉は5月12日~6月14日展示]

かつて北野社にまつられた
平安時代の十一面観音像

十一面観音立像

京都・曼殊院 [通期展示]

菅原道真と北野天満宮

菅原道真は承和12年(845)、文書博士・菅原是善の三男として生まれました。長じては宇多天皇の信任を得、父と同じく文書博士を経て蔵人頭や参議、式部大輔の役に就いて天皇の側近としてその政治手腕を発揮しました。寛平6年(894)の遣唐大使に任命された際は、唐の政情不安を踏まえて遣使の再検討を建議するなど、国政の重要な局面で存在感を示したことでも有名です。醍醐天皇の世となって右大臣に昇進した道真ですが、讒言により大宰員外帥として九州へと左遷され、大宰府で没しました。道真の死後、京では相次いで凶事が起こり、これらは無念の死を遂げた道真の祟りによるものとされたため、天暦元年(947)に村上天皇の勅命により、京都の北西(天門)に位置する北野の地に彼の怨霊を鎮める社が創建されました。のちに一条天皇より「天満大自在天神」の神号と太政大臣の位を追賜され、善神の性格を強めたことで、京都では今日でも「北野の天神さん」として地域の人々に親しまれています。

北野天満宮の歴史

菅原道真が北野の地に神としてまつられるまでの草創の由来と、その霊験譚を集めた絵巻物が「北野天神縁起絵巻」です。本章では、現在国宝・重要文化財に指定されている「北野天神縁起絵巻」の多くが一堂に会します。また、長い歴史を誇る北野天満宮と京都の地域社会との結びつきを、同宮に伝来する古記録から辿ります。

北野天神縁起絵巻の中で、現存最古かつ最大の国宝絵巻

国宝 北野天神絵巻(承久本)巻第1(部分)

京都・北野天満宮 [通期展示、写真の場面は前期展示]

室町時代の北野社―神仏習合の風景

北野宮曼荼羅図

京都・北野天満宮 [前期展示]

北野天満宮と芸能・文化

現在では受験合格祈願の神社として絶大な人気を誇る北野天満宮ですが、これは奥深い天神信仰の一側面でしかありません。菅原道真は学問のみならず、和歌や芸能、戦勝祈願の神としても敬われ、北野の地は各時代において芸能と文化の一大発信拠点の役割を担ってきました。北野天満宮に奉納された品々や、往時の賑わいを伝える名品を通じて同宮が日本の文化に与えた影響を考えます。

武神としての側面も!
奈良・與喜天満神社に奉納された大鎧

重要文化財 赤糸威鎧 大袖付

奈良・長谷寺 [前期展示]


源氏の重宝、兄弟刀揃い踏み!

左】重要文化財 太刀 国綱ト銘ガアル(鬼切丸・髭切)

京都・北野天満宮 [通期展示]

右】重要文化財 太刀 銘□忠(薄緑・膝丸)

京都・大覚寺 [通期展示]

鬼切の太刀が羅城門の鬼を討つ

羅城門絵巻 上巻(部分)

京都国立博物館 [前期展示]

北野社で歌舞伎踊りを開始、出雲の阿国を描く名品

重要文化財 阿国歌舞伎図屏風

京都国立博物館 [前期展示]

能、遊楽、北野社をあらわす桃山時代の風俗画

観能図屏風

神戸市立博物館 [後期展示]

日本文化発信の中心の地としての北野天満宮 
豊臣家とのつながりも

北野天満宮では、豊臣秀吉が境内で北野大茶湯を催し、慶長年間には出雲阿国がややこ踊り(歌舞伎踊り)を演じるなど、文化発信の中心地として強く意識され、文化芸能の神社としても仰がれてきました。第3章では、《北野大茶湯図》や秀吉の息子・秀頼寄進の刀を展示するほか、《阿国歌舞伎図屏風》など芸能関連の品、また道真が登場する能で用いられる能面なども展示します。

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北野祭礼図絵巻(部分) 京都・北野天満宮 [通期展示]